「練馬駅北口ものがたり」
練馬駅北口複合ビル建設が着々と進んでいます。
土地には歴史があり、ここではこの土地の取得にまつわる物語をお伝えします。
<幻の立ちしだれ柳>
このひろばの西側にすっくり立って、地域のシンボルツリーとして愛されてきた立ちしだれ柳。工事中だけ他所で養生するはずでしたが、業者側の設計変更により元の所に戻れなくなりました。みどり30推進計画の掛け声が虚しく響きます。
<カネボウ跡地を都と区が買った>
かつて、ここにはカネボウ(鐘ヶ淵紡績工業株式会社)工場があり、戦争中には軍需物質を作っていたので、戦争末期にはこの辺りにも爆弾が投下されました。工場排水や敷地内にあった女工たちの生活寮からの汚水も、西側の小川に垂れ流され環境劣悪な地域でした。 工場が立ち退いた後、1978年、東京都と練馬区が環境改善地域として取得し、区民の文化生活に資するという目的で練馬区に譲りました。文化センター、平成つつじ公園、交通広場が次々に開設され、約4000㎡の「区民ひろば」が公共事業のための資材置き場や清掃車の待機場所、最近では保育園建て替え時の仮園舎として暫定利用されていました。
<区民のための区民ひろばに>
駅前の一等地ですが、土地取得の経緯や「区民ひろば」として区の財産台帳にも記載されていたことから、ここは一般区民のための環境に配慮した活用が求められてきました。練馬まつりがここで行われたこともあり、地域住民からはイベントや防災のためのオープンスペースとして、噴水のある緑豊かな広場が要望されました。バブルのころには宴会場のあるホテルの話や、最近では高層マンションなどのとんでもない話が浮上したこともありました。
<活用イコール箱ものか!>
練馬区は有識者や地元区民などから成る活用検討会議を立ち上げ、練馬区の中心核らしい「にぎわい」と「環境への配慮」を活用の提言としてまとめました。一方、区立産業振興会館を求める声が業界から根強くあり、練馬区産業振興計画策定検討委員会からは、「会館に最適なのは練馬駅北口区有地」との結論を導き出しました。
かくして、練馬駅北口区民ひろばには、産業振興会館のための箱ものを建てることになりましたが、東京都から区民の環境改善を目的に譲り受けた手前、区内企業の便宜のためだけでは到底納得を得られないので、少しは区民ニーズを取り入れて駐輪場と子育て関連施設、区民交流施設を付け足しました。4000㎡のひろばの代わりに地上4階に10分の1の400㎡のひろばをつくりますが、人々が行き交う本来の「ひろば」になるのか疑問です。
<民間活用のリスクがいっぱい50年>
リーマンショックによる未曾有の不況で区財政は急速に悪化し、多額の税金を投じて箱ものを作ることは難しくなったため、区は官民協働の名の下に50年の定期借地権方式で民間企業の日立キャピタル株式会社に建物を作らせ、区が公共施設の部分を買い取ることになりました。4000㎡の土地を50年間約13億円で貸し、建物の5分の一を約21億円で買うのが合理的かどうかの疑問とともに、契約では<借地権の譲渡>が認められているのも心配です。アメリカの金融危機の引き金となったサブプライムローンのように小口化した不良債権に組み込まれる可能性もあります。民間活用のリスクに誰が責任を持つのでしょうか? 工事の様子を見ると大量の鉄とコンクリートの塊であるこの建物を更地にして返却するなど非常に難しく、半永久的に建物は民間のものとしてあり続けるでしょう。いつの間にか練馬区の土地も失ってしまわないよう孫子の代まで見届けねばなりません。
<来春にはオープンするが>
1,2階には商業施設、3,4階には産業プラザを主とする公共施設、5~8階にリハビリ専門病院、地下には自動車・自転車駐車場が入りますが、ライフコーポレーションと慈誠会病院のほかは個名が不明です。来春のオープン時にテナントが決まらない場合、さらに区の買い取り部分が増え、さらに税金が投入されることが懸念されます。公共の「公」とは何か? 「公」の役割は何なのか? みんなの税金を使うのに適しているのかどうか? 主権者として見極めていきましょう。
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